バンベルクで注目を集めているのは、ジョージ合唱団の北の柱にある《大聖堂の騎士(Domritter)》だ。《大聖堂の騎士(Domritter)》は、無色の石で作られた等身大の騎士像だが、誰を表しているのかは明確に伝えられていない。そのため、歴史家や科学者は何年もの間、騎士のモデルの解明に取り組んできた。
これまでのところ、騎士は13世紀前半に作成されたことがわかっている。その作成は、バンベルク大聖堂の建設と一致しており、13世紀初頭にバンベルクの司教であったエクベルト・フォン・アンデクス―メラニエン(Ekbert von Andechs-Meranien)の時代と合致する。アンデクス-メラニエン家は、11世紀から13世紀にかけて、バイエルン南部とフランケン地方で特に影響力があった。1208年6月21日、フィリップ王はバンベルクのエクベルトの宮殿で宮中伯オットーによって殺害されたのだった。これによりアンデクス-メラニエン家は大打撃を受けた。
最初の大聖堂はハインリッヒ大聖堂(Heinrichsdom)と呼ばれていたが、1185年の大火事で焼失している。新しく建てられたバンベルク大聖堂は1237年に奉献された。調査により、バンベルクの騎士は創設以来常に同じ場所にあり、1225年から1237年の間に作成されたことが明らかとなっている。
残念ながら、この作品の作成者は不明のままだ。しかし、2つの異なる芸術学校が大聖堂から委託されたことが証明されている。最初の学校がレリーフと装飾を担当し、2番目は大聖堂の騎士を含む彫刻を作成したとみられる。
騎士が立ったときと同じ場所に立っていることが明らかになった時点から、さらなる調査を行うことができた。騎士の馬は北の柱と平行に立ち、左後ろ足だけを上げている。一見すると、馬が立ち止まっているようにも見え、その上で騎士自身は右側を向いている。騎士は武器を持たず、ローブに包まれ、王冠を身に着けている。
彼の視線は、ハインリヒ皇帝とクニグンデ皇后の墓の方に向けられている。彼らは当時のハインリッヒ大聖堂に埋葬されていた。しかし、今日の大聖堂はもっと大きく、間取り図も異なる。そのため、墓自体を移転する必要があった。そして、これはまさに騎士が見ているように見える場所であり、同時に彼は王子のポータルを見ています。このことから、騎士は、皇帝の墓に敬意を表するために一時停止したと結論付けることができる。
それにもかかわらず、騎士の身分はわかってはいない。王冠だけが手がかりである。その王冠から推測して、人々はそれが聖ハインリッヒのイメージであると結論を下した。しかし、ハインリッヒは皇帝だったが、騎士がかぶっている冠は王冠である。したがって、騎士が皇帝ハインリヒを表しているとは考えにくい。冠から判断すると、この人物は王でなければならない。しかし、当時、王が教会で記念碑を贈られることは有り得ないことだった。通常は棺桶もしくは墓石の上に掘られる像として贈られた。そのため、バンベルクの騎士は教会に設置された最初の王の立像でもあるともいえる。これらの2つの側面を考慮すると、騎士は列聖された王であったと考えられる。騎士は一切の武具を持っていない為、ハインリヒ皇帝の義兄であった、聖シュテファンのイメージではないかと考えられる。
伝説によると、シュテファンはまだ洗礼を受けていないときにバンベルクを訪れたと言われている。彼はキリスト教に改宗するため、馬に乗ってハインリッヒ大聖堂に行ったと言われている。彼は死後、この大聖堂に埋葬されている。
別の理論は、騎士はシュヴァーベンのフィリップ王(Philip von Schwaben)であるというものだ。彼は1208年に町を訪れ、武装していなかった為、殺害されている。最初、彼はまだ完成していない帝国大聖堂に埋葬されたが、後に甥のフリードリヒ2世によってシュパイアー大聖堂に再度、埋葬された。この悲劇的な話への言及はない。そのため、大聖堂の騎士はフィリップ王との見方もある。
騎士が実在の人物を代表していないことも考えられる。騎士はホーエンシュタウフェン王朝の象徴であるという説である。大聖堂の建設時、シュタウファー王朝のフリードリヒ2世が率いる十字軍が行われたが、当時、これらはバンベルクに大きな影響を与えた。
散乱した色の粒子は、ライダーが塗装されていることを示している。ベースには緑があしらわれ、馬は白色、ローブは赤地にゴールドの装飾が施されており、王冠は金色が使われていたようだ。ナチス時代には、騎士はブロンドの髪をしており、アーリア人のイメージであると主張されていた。ただし、塗料の残留物は、髪の色が黒であったことを示している。
参考:
gobamberg.de, “Bamberger Reiter”, https://gobamberg.de/sehenswuerdigkeiten/bamberger-reiter/
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