フランケンワイン | ヴュルツブルクのボックスボイテル

ヴュルツブルク

【ドイツ観光】マイン河畔に位置する辛口ワインの産地

マイン河畔に位置するヴュルツブルクは、ドイツでも有数のワインの産地だ。

ヴュルツブルク中央駅からカイザー通りを進むと、フランケンワインを販売している【ユリウス・シュピタール】に出る。ここはヨーロッパ各地で愛されるフランケンワインを製造販売しており、アウグスティーナ教会の隣にある【ビュルガー・シュピタール】と並んで、最も有名なワインレストランでもある。

ユリウス・シュピタール(1576年設立)は400年以上にわたってワインを作り続けており、ビュルガー・シュピタール(1316年設立)に至っては700年以上前からワインを作っているそうだ。どちらのワイナリーのワイン銘柄も、大きなデパートであればドイツ中どこでも販売している。

シュピタールとは、ドイツ語で「療養所・救貧院」の意味で、今でも施設の一部は療養所や病院、老人ホームとして利用されている。ワインの製造元と療養所がひとつになっているのは妙な取り合わせだが、ワインの販売による利益は療養所の運営費に回されると聞いてなるほどと感心した。ワインを飲む側も社会貢献をしていると思えば罪悪感を感じなくて済むというわけだ。

ヴュルツブルクはフランケンワインの産地であり、ボックスボイテル(Bocksbeutel)という独特な瓶に入った辛口の白ワインが有名だ。ボックスボイテルは、直訳すると「山羊の陰嚢」のことであり、そのボトルが模倣した対象による。その歴史は、革製の水筒にまで遡る。巡礼の旅に出かける者は、屋外で水分を接種できるよう、ガラスや陶器のボトルに入れて持ち歩いていた。この独特な形状は、側面が平面である点だが、これは転がらず、体に密着させて持ち運ぶことができるというものだ。欧州司法裁判所(Europäischer Gerichtshof)の判決によると、ボックスボイテルはEU内の著作権で保護されており、ヴュルツブルクを含むフランケン地方とバーデン地方の一部のワインしか、この特殊なボトルに入れて販売することはできない。

ボックスボイテルに入ったフランケンワイン 

そんなボックスボイテルのボトルに入れられたワインの起源は中世にまで遡る。フランク王国のキリスト教化の過程で多くの修道院が設立され、修道院の僧侶は聖礼典の儀式で使用するワインを自分たちで作りたいと考えていた。

ハンメルブルク(Hammelburg)はフランケン地方で最も古いワインの町だ。カール大帝からの寄付証書によると、777年にブドウ園がフルダ修道院に寄贈されている。数年後、ワインはヴュルツブルクに伝わり、今日までドイツで最も古いブドウ園の1つであるヴュルツブルクスタインで最初のブドウが栽培された。974年、ブドウ園はマインタール(Maintal)、シュタイガーヴァルト(Steigerwald)、オーバーマイン(Obermain)へと拡張されていった。

カール大帝による寄贈書(Source:historisches-lexikon-bayerns.de)

1127年からの寄付証書によると、国営のホフケラー・ヴュルツブルク(Hofkeller Würzburg)が、記録の上ではドイツ最古のワイナリーとなる。それから200年、ワインはフランケン地方で人気のある飲み物となり、16世紀にその全盛期を迎えた。この時代、ワインは栽培面積40,000ヘクタールを超える600以上の場所で栽培されていたという。

しかし、早くも17世紀には、フランケン地方のブドウ栽培は衰退を迎える。1618年に始まる三十年戦争とそれに伴う略奪によって、ぶどう畑も荒廃し、これがワインの生産と消費の両方に打撃を与えたのだ。

また三十年戦争後も、バイエルン公国とプファルツ選帝侯の統一、およびナポレオンの支配下で、多数の修道院が解散させられたことで、フランケンワインの需要は17世紀の終わりに大幅に減少した。

ブドウ畑の面積は全盛期のほぼ半分となったが、1836年、フランケンワインの生産者協会がヴュルツブルクに設立された。 18世紀の終わりには、菌やフィロキセラの蔓延がブドウ園に甚大な被害をもたらし、ワインの生産はほとんど不可能となった。しかし、1913年、ミュラー・トゥルガウ種がフランケン地方のブドウ生産地に広まった。20世紀には気候条件の悪化により、その後、フランケン北部と中部でブドウ栽培が事実上停止する事態となったが、生産者グループの再建とテクノロジーの進歩によって、フランケン地方のワインは1960年代にはその勢いを取り戻した。2013年には、5,000にも及ぶワイナリーが存在し、年間2,000万本ものボックスボイテルを出荷し、その年間売上は2億ユーロに上る。

今日でもヴュルツブルクにはワインシュトゥーベ(Weinstube)というワイン居酒屋がたくさん存在し、地元のフランケンワインを楽しむことができる。フランケン地方で収穫されたブドウにより作られた辛口のワインは、独特の形状をしたボックスボイテルに入れられ、高い品質基準をクリアーした上質のものだけが出荷される。

ヴュルツブルクのワインハウス

参考:

wirwinzer.de, “Der fränkische Bocksbeutel und seine Geschichte”, 25.05.2018, https://wirwinzer.de/blog/bocksbeutel#:~:text=Urkundlich%20wird%20der%20Bocksbeutel%20erstmals,in%20Bocksbeutel%20abgef%C3%BCllt%20und%20versiegelt.

br.de, “Geschichte des Frankenweins”, 12.03.2013, https://www.br.de/franken/inhalt/kultur/frankenwein-geschichte-100.html#:~:text=Die%20Geschichte%20des%20Frankenweins%20beginnt,als%20die%20%C3%A4lteste%20Weinstadt%20Frankens.

historisches-lexikon-bayerns.de, “Weinbau in Franken”, Markus Frankl, https://www.historisches-lexikon-bayerns.de/Lexikon/Weinbau_in_Franken

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