ブドウ畑に隠された金貨

ヴォルムス

リープフラウエン教会

町の中心地からは少し離れたライン河畔にこの教会はある。《リープフラウエン》とは《聖母》という意味で、聖母マリアに捧げられた教会だ。教皇ピウス2世の命で教会の建設が始まり、1465年にゴシック様式の教会が完成した。

     ピウス2世

この頃には、教会の近くにライン川の船着き場も隣接されていた。1495年のヴォルムス帝国議会の際には、皇帝マキシミリアン一世が、前年に結婚したばかりのスフォルツァ家出身の王妃ビアンカを伴ってこの教会を訪れたという。1618年からの三十年戦争、続くプァルツ継承戦争で、建物は破壊されてしまう。

マキシミリアン一世とビアンカ
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この教会に隣接するブドウ畑では、18世紀からワインが製造されていた。教会の名前をとって、《リープフラウエンミルヒ》という。この銘柄は、軽い甘口の白ワインで有名で、すでに1744年には書物に記載があるという。

“Soweit der Turm seinen Schatten werfe” 「塔が影を落とす限り」

その当時は、リープフラウエン教会の塔が影を落とす地域で育ったブドウで作られたワインのみ、その名称で呼ばれたそうだ。この本物のヴォルムスワインは、ヴォルムザー・リープフラウエンシュティフト・キルヒェンシュテュック(Wormser Liebfrauenstift-Kirchenstück)として販売されている。リープフラウエンミルヒは、ペーター・ヨセフ・ヴァルケンベルク(Peter Joseph Valckenberg)という人物が設立したワイン販売会社を通して、国際的に有名になった。ところが、地域のワイン製造業者がその成功にただ乗りして、リープフラウエンミルヒの名称でワインを販売しだしたのだ。

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19世紀には、英国王室やチャールズ・ディケンズまでがこのワインを楽しんだと言われている。1970年代から1980年代には、リープフラウエンミルヒは、ドイツのワイン輸出市場で安価なワインとしてスーパーマーケットに並ぶようになった為、評判が著しく損なわれてしまった。時代とともに数多くの模造品が出たため、ヴァルケンベルクは《リープフラウエンミルヒ・マドンナ》という新しいブランドで、ラインヘッセン地方で捕れたブドウのみを使用した高品質なワインの販売を開始した。ドイツでは現在でももっともよく見かけるワインの一つであり、その手ごろな価格と飲みやすい味わいで愛されている。

最後にワインに因んだヴォルムスの伝説を。

その昔、ヴォルムスに勤勉な農夫がいた。農夫は二人の息子にブドウ畑を残したが、息子たちは父に似ず、怠け者で、父から譲り受けたブドウ畑の世話もしなかったという。病床で死期を悟った父親は、二人の息子を枕元に呼び、遺言を残した。「お前たちのブドウ畑に金貨を隠した」と。欲に目がくらんだ二人は、早速自分たちのブドウ畑を隅から隅まで掘り返したのだった。ところが金貨は一向に見つからない。やがて秋になると、二人のブドウ畑は鍬を入れて掘り起こしたせいで、いいブドウが実り、上質のワインができたという。そのワインで財を成した二人は、ようやく父親の遺言の意味を理解したのだった。

怠け者の息子がいるかは定かではないが、ヴォルムスには多くのワイン醸造所がある。ライン川に面したブドウ畑からできる上質なワインで有名なヴォルムスは、ラインヘッセン地方では最大のワイン産地となっている。

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