子供をもたらす噴水

ドレスデン

ドレスデンのヘルタ・リンドナー通り(Hertha-Lindner-Straße)にある噴水の上部には、コウノトリの像が飾られており、クエックボーン(Queckborn)噴水と呼ばれている。1461年に建てられた市内でもっとも古い噴水のひとつだ。高さは3.6メートルあり、前面のレリーフにはドレスデンの紋章が取り付けられている。以前は、ゲルベルガッセ(Gerbergasse)と現在のカトリック孤児院の前にあるグリューネンガッセ(Grünen Gasse)の入り口に建てられていた。《Queck》は牛を意味する古いドイツ語であり、したがって牛に水をやっていた噴水という意味だが、一説には、 《Queck》には《生命》という意味もあった。噴水は、1965年に市の水道網に接続され、飲料用ではないが、今でも稼働している。

その昔、コウノトリはこの噴水から子供たちを連れ出して運ぶという言い伝えがあった。不妊に悩んでいた女性がこの噴水の水を飲むと、子宝に恵まれるという伝説が広がり、1514年頃にはすでに遠方からもこの噴水を訪れる人が多く、一種の巡礼地になっていたという。

ここを訪れた女性が子宝に恵まれたという知らせが多かったため、1512年、ヨハン・フォン・マイセン司教(Johann von Meißen)は《聖母クエックボーン巡礼礼拝堂》を建てる許可を与えた。しかし、信者の訪問が後を絶たず、この礼拝堂への訪問者が増える一方で、他の教会、特にクロイツ教会(Kreuzkirche)の収入が減ったのだった。結局、礼拝堂の許可を取り消すために、司教はローマにまで赴く必要があったという。礼拝堂は、1521年に取り壊されることとなった。

その後も噴水は残され、何度かの改修を経た。1870年、噴水はドレスデンの建築家ユリウス・コッホ(Julius Koch)によって現在の形に再設計された。噴水の上のコウノトリは1735年に設置されたもので、当時は4人の赤ん坊の像もあったという。しかし、1945年にひどく損傷したため、1968年にアルフレッド・ヘルニッヒ(Alfred Hörnig)が新しいコウノトリ像を作成した。

上記のように、日本と同様、欧州でもコウノトリは赤ん坊をもたらす象徴だ。この伝説は18世紀頃にその起源があると言われる。この伝承が一般に流布した理由は、子供に、生殖・出産の具体的な説明を避けるためだが、赤ん坊を運んでくるという名誉ある仕事にコウノトリが選ばれたのは、この鳥が、赤ん坊を運ぶのに十分な大きさで、昔は民家で目撃されることが多かったからだ。また、高い塔や屋根に巣を作って子育てをする習性も、「子供を運ぶ」というイメージに寄与したようだ。このことから欧米では「コウノトリ(またはシュバシコウ)が赤ん坊をくちばしに下げて運んでくる」または「コウノトリが住み着く家には幸福が訪れる」という言い伝えが広く伝えられている。

ドイツの場合、コウノトリは、《Storch:シュトルヒ》というが、ニックネームは《Adebar》といった。古高ドイツ語の「Auda」は《幸運》を意味し、最後の音節の「bar」には《持ち運ぶ》という意味があった。つまり、《幸運を運ぶもの》という意味で、コウノトリが赤ん坊を運ぶという伝承に結びついたと考えられる。

参考:

dresden-lese.de, “Der Queckbrunnen zu Dresden”, Johann Georg Grässe, https://www.dresden-lese.de/index.php?article_id=310

de.wikipedia.org, “Queckbrunnen”, https://de.wikipedia.org/wiki/Queckbrunnen

stadtwikidd.de, “Queckbrunnen”, https://www.stadtwikidd.de/wiki/Queckbrunnen

femibaby.de, “Die Ge­schich­te vom Storch”, https://www.femibaby.de/service/geschichte-vom-storch/

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