世界最古のステンドグラス

アウグスブルク

ルネサンス様式のアウグスブルク市庁舎から目抜き通りのマキシミリアン通りを北へ歩いて5分の場所にアウグスブルク大聖堂が静かに佇んでいる。白壁にオレンジの屋根が特徴的だ。この大聖堂からさらに北に5分ほど歩くとフィッシャー門(Fischer Tor)という中世当時の城門跡に、東に5分歩くとウンターラーグラーベン(Unterer Graben)という堀の跡に出る。ネルトリンゲンやローテンブルクに比べ町の規模が大きい為、アウグスブルクが城壁に囲まれた町であったことを実感しにくいが、この辺りを散策するとアウグスブルクも城壁、堀に守られた城塞都市であったことがしっかり認識できる。

アウグスブルク大聖堂は高さ62メートルの塔をもち、建物はロマネスク様式とゴシック様式で建てられている。大聖堂は別名《エリサベト訪問の大聖堂》(Hoher Dom Mariä Heimsuchung)とも言われており、聖母マリアに捧げられている。

《エリサベト訪問》とは、キリスト教において、聖母マリアがエリサベトを訪問したことを意味している。マリアは、エリサベトが身ごもって6か月になることを受胎告知の折に告げられたことからエリサベトを訪ねたのだった。エリサベトと胎内の子(洗礼者ヨハネ)は聖霊に満たされ、エリサベトはマリアを祝福する。マリアはキリスト教聖歌のひとつである《マニフィカト》「我が心、主を崇め」を歌って主を賛美し、エリサベトのもとに3か月ほど滞在したという。

エリザベト訪問 -ジョット(Giotto di Bondone)

現在、大聖堂が建っている場所はローマ帝国ラエティア州の州都アウグスタ・ヴィンデリカㇺ(Augusta Vindelicum)の市壁の内側にあったことがわかっており、大聖堂の下には、以前に建てられていた4世紀の教会の基礎が見つかっていることから、ローマ時代ここに建っていた大聖堂は紀元前に建てられていた可能性がある。しかし、この最初の教会は200年後に破壊されたと伝えられている。ローマ時代にこの地にやってきたキリスト教徒でわかっているのは、304年に拷問にかけられて殉教した聖アフラだ。

検証可能な記録によると、大聖堂はアウグスブルクの最初の司教であるヴィトケルプ(Wikterp)とシンペルト(Simpert)の元で805年に建設されたという。その後、9世紀末のマジャール人のヨーロッパ侵攻により、大聖堂は損害を受けたがウルリッヒという司教によって修復さている。10世紀、大聖堂は一度倒壊を経験し、また再建されている。995年、神聖ローマ皇帝オットー1世の妻であるアデルハイド(Adelheid)によって、大聖堂の再建が行われたといい、1065年にロマネスク様式の建物が完成している。

14世紀に大聖堂はゴシック様式に改修され、4つのゴシック様式の礼拝堂もこの頃に付け加えられている。16世紀にはプロテスタントによる偶像破壊により大聖堂内部も一部破壊されたが、その後の反宗教改革により内部の改修も行われた。この時、北側の塔も建てられている。17世紀には大聖堂内部が一部バロック様式に再設計されたが、19世紀には内装などをもとのゴシック様式に戻す作業が行われ、その時にハンス・ホルバインの絵画4作品も設置された。

《マリエン・カペレ》(Marienkapelle)は建築家ガブリエル・デ・ガブリエリ(Gabriel de Gabrieli)の設計よって1720年に建てられた。この礼拝堂にはヨハン・ゲオルク・ベルクミュラー(Johann Georg Bergmüller)によって描かれたマリアの生涯が描かれたフレスコ画があったが、1944年の爆撃で破壊され、その後再建されたものであるため、現在我々が目にするフレスコ画はオリジナルではなくレプリカである。

大聖堂内には、旧約聖書に登場する5人の人物、ヨナ、ダニエル、ホセア、ダビデ、モーゼを表したステンドグラスがある。このステンドグラスは12世紀初頭の作品だと考えられており、原型を留める最古のステンドグラスと言われている。(破片の形で残る最も古いステンドグラスは、ヘッセン州にあるロルシュ修道院で見つかった9世紀のものだと言われている。)モーゼのステンドグラスは1550年頃のオリジナルを元にした復元レプリカである。

ミュンヘンの南にテーゲルン湖(Tegernsee)という湖があるが、そこに存在した修道院では、鐘の鋳造をはじめ、ガラス細工や木彫りの彫刻も手掛けていたようで、このステンドグラスもこの修道院のベネディクト会士、ゴスベルト(Gozbert)という修道院長のもとで製作されたと伝えられている。

この最古のステンドグラスは大聖堂の高い位置にあるので下からは鑑賞しづらく、綺麗に写真に収めにくいが、大聖堂内で販売している絵葉書にはこのステンドグラスをアップで撮影したカードがあるので、じっくり鑑賞したい方にはそちらの購入をお勧めする。

参考:

www.historisches-lexikon-bayerns.de/Lexikon/Glasmalerei_Sp%C3%A4tmittelalter/16._Jahrhundert

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