ケルンの小人 | ハインツェルメンヒェン

ケルン

【ドイツの伝説】ケルンの人々を助けるかわいい小人たち

ケルン大聖堂から南へ歩いて2分。アム・ホーフ(Am Hof)という通りには、フリュー(Früh)と呼ばれる、ケルンで一番古いビール醸造所がある。そのすぐ近くに、ハインツェルメンヒェン噴水(Heinzelmännchenbrunnen)と呼ばれる噴水がある。この噴水には、かわいらしい小人たちが遊んでいる姿が描かれている。彼らは、先のとがった帽子を被った小人で、家庭に住む精霊であり、ハインツェルメンヒェンと呼ばれている。この小人たちは、ドイツで有名な民話に登場するキャラクターだ。

ケルンに伝わるハインツェルメンヒェンの民話は、ケルン出身の作家、エルンスト・ヴェイデン(Ernst Weyden)の作品として、1826年に登場した。 しかし、物語が広く知られるようになったのは、1836年にアウグスト・コピッシュ(August Kopisch)が書いた詩によってだった。 アウグスト・コピッシュはドイツの歴史画家兼作家だったが、ケルンを訪れたことはなかったという。

この噴水は、1900年頃に、建築家ハインリヒ・レナード(Heinrich Renard)と彼の父である彫刻家エドムント・レナード(Edmund Renard)によって設計されたものだ。噴水は、 ハインツェルメンヒェンの詩を書いたアウグスト・コピッシュの生誕100周年を記念して、ケルン美化協会(Kölner Verschönerungsverein)から寄贈された。オリジナルの彫刻は、ケルン市立博物館に展示されており、噴水の彫刻は耐候性の高いコピーに置き換えられている。

ケルンの小人、ハインツェルメンヒェンが登場する話は次のようなものだ。

むかしむかし、ケルンの職人は実にうまく《それ》を使っていた。彼らが夜寝ている間、小さくて勤勉な《仲間》がやって来て、職人の仕事をせっせと片づけた。そのため、職人たちは日中はリラックスして落ち着いて生活することができた。空腹になることもなければ、仕事で忙しくて娯楽を諦めたりする必要もなかった。ケルン大聖堂の建設でさえ、労働者が一日中休んで、ベッドで寝ていたとしても、作業は順調に進んでいた。

この勤勉な《小人たち》はこの町の人々にとってまさしく幸運そのものだった。この小さな労働者からの条件はたった1つだった。彼らは人に見られずに、誰にも邪魔されずに働くことだけを望んでいた。

もちろん、ケルンの人々は小人たちがどんな格好をしているのか、どうして彼らがこんなに短い時間に仕事を終えられるのか、見たくてしかたなかった。しかし、今享受している素晴らしい生活を犠牲にしないように、自分たちの好奇心に蓋をしていたのだった。

しかし、たったひとり、湧き上がる好奇心を抑えきれない人物がいた。仕立て屋の親方の妻だ。ある晩、彼女は夫の職場の床いっぱいにエンドウ豆をまいた。小人たちが暗闇の中で仕事にかかろうとしたとき、彼らはエンドウ豆を踏んで滑り、大きな音を立てて転倒してしまった。騒音で目が覚めた仕立て屋の妻はすぐにベッドから飛び出し、急いで音のほうまで見に行った。しかし、小人たちはすでにその場にいなくなっていた。そして小人たちが戻ってくることはなかった。小人たちが戻ってこなかったことで、ケルンの人々は自分で仕事をしなければならなくなった。このことが原因で、ケルン大聖堂の建設に300年以上かかっと言われている。

お話の内容は怠惰なケルンの人々への批判とも考えられるが、詩を書いたアウグスト・コピッシュはベルリンに住んでいたプロイセンの公務員だった。1815年以来、ケルンのあるラインラント地方は規律あるプロイセンに属していたのだが、プロイセンの人々にとっては、ケルンの人々はあまり仕事熱心ではないと思われていたようで、その考えが反映されているようだ。

この噴水を訪れると、ケルンの人々が見逃した《小人たち》が仕事をしている様子をみることができる。好奇心の強さで《小人たち》を罠にかけた仕立て屋の妻も、若くて美しい人物として噴水に描かれている。これは、女性が悪役として描かれるのではなく、仕事を《小人たち》任せにしていたケルンの人々のなまけ癖に終止符を打った人物という見方を示したのだろう。

参考:

drachenwolke.com, “Als es in Köln noch die Heinzelmännchen gab …”, https://www.drachenwolke.com/rheinsagen/heinzelmaennchen/

koeln-lese.de, “Die Heinzelmännchen zu Köln”, Julia Meyer, https://www.koeln-lese.de/streifzuege/sagen-und-maerchen/die-heinzelmaennchen-zu-koeln/

dw.com, “Die Heinzelmännchen zu Köln”, Florian Görner, https://www.dw.com/de/die-heinzelm%C3%A4nnchen-zu-k%C3%B6ln/a-16178884

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