アイフェル東部にある小さな町、マイエン。この町の北西にあるネッテタールの岩盤の上に建てられたビュレスハイム城(Schloss Bürresheim)は、1157年に初めて文書に言及されている。美しい森の風景に囲まれたマイエンは、地理的環境から「アイフェルへの玄関口」と呼ばれている。南に30㎞下ると観光地でも有名なモーゼル河畔のコッヘムがあり、東へ40㎞の距離にはライン川とモーゼル川の合流するコブレンツがある。
このアイフェル地方にある城のほとんどは、過去の戦争で大きな被害を受けている。最初に多きな打撃を受けたのは、ルイ14世によるプァルツ継承戦争(大同盟戦争)だ。ルイ14世の軍隊は焦土作戦をとり、ライン川左岸の城を徹底的に破壊した。その後、ナポレオン軍がこの地域の城を破壊している。三十年戦争の被害を受けた城もあるが、概ね、フランス軍によるこの二つの戦争でライン左岸の城は廃墟になったのである。
しかし、こういった他の何十もの城、宮殿、修道院とは対照的に、ビュレスハイム城は一度も征服されたり破壊されたりすることはなかった。この地域で破壊されなかった城は、エルツ城(Burg Eltz)やリッシンゲン城(Burg Lissingen)など、片手で数えるほどである。
ビュレスハイム城は厳密に言えば2つの城で構成されている。 ケルン城とトリーア城である。ビュレスハイム城は12世紀に建てられたが、17世紀までケルン城とトリーア城は区別されており、別々の存在として認識されていた。後に増築と改修が行われ、二つの城が統合されたのだ。
ケルン城は今日では廃墟となっているが、トリーア城の方は状態が良く訪問可能である。この部分の土地は1189年にケルン大司教のケルン城に部分的に売却され、他の部分は約100年後にトリーア大司教区のトリーア城へと売却された。
トリーア城の方は、砲塔の丸く尖った屋根が特徴的で、壁は木組みのハーフティンバー様式で出来ており、外観はエルツ城の造りに類似している。1938年までラインラントの貴族がここに住んでおり、バロック庭園から眺める情景は400年間ほぼ変わっていないという。
スティーブン・スピルバーグはここで「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦」のシーンを撮影している。ハリソン・フォード演じるインディー・ジョーンズと、ショーン・コネリー演じるインディーの父親が、ナチスドイツに捕らわれるシーンだ。二人は椅子に縛られた状態から脱出を試み、誤って屋敷を火をかけてしまうコミカルなシーンだが、このシーンは、ビュレスハイム城で撮影されている。
伝説的なジェノベバ城、傾いたねじれた塔のあるクレメンス教会、聖心教会、バロック様式の旧市庁舎、噴水のある美しい市場広場などが最も有名な観光スポットである。中世の建築に加えて、内部もよく保存されており、後期ゴシックから歴史主義までの作品が含まれていまる。内部では古い衣装やシャンデリア、壮大な絵画、貴重な磁器のコレクションを見ることができる。
この場所から、ニッツ(Nitz)の谷やシェールコップ(Schälkopf)の丘まではそう離れておらず、ネッテタールの岩の上に建つ城の近くには、いくつかのハイキングコースが整備され、多くの観光客を惹きつけている。
参考:
wackerberg.de, “Indiana Jones und das Geheimnis von Schloss Bürresheim”, https://www.wackerberg.de/tatort/indiana.php
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